患者さんの身体の状態を、見て、触れ、感じると、「ミクロの中にマクロが見える」「身体が語るストーリー」が観えてきます。
「身体が語るストーリー」を探ることによって、病気の原因に気づくことができる。
私はそう思うのです。
私は平成4年に皮膚科を開業して以来、皮膚科の知識のみでは解決できない相談が当初から非常に多かったため、
各種心理療法(精神分析、カウンセリングなど)をずっと学び続けてきました。
その後、東洋医学の知識を得るために、上海中医学院で漢方、鍼灸の勉強をし、その後、代替医療、ホメオパシーにのめりこみました。
そのような最中、自分自身が病気になってダウンしたことがあります。
当時を振り返ると、軽度の鬱状態だったようにも思います。
この時に、現代医学の限界を自ら経験しました。
「足がだるいと訴えても内蔵とは関係ないと言われるだけ」
「眠れない・・と訴えれば睡眠薬を処方します」と。
患者という立場にたって初めて、医者は患者の「病気になった私」という部分には何ら答えも癒しもないという事実に愕然としました。
その時の経験から、私は患者さんの身体の状態を、見て、触れ、感じるということが何よりも大切だと考えるようになりました。
それを重ねていくと、「ミクロの中にマクロが見える」「身体が語るストーリー」が観えてきます。
「身体が語るストーリー」を探ることによって、病気の原因に気づくことができる。私はそう思うのです。
病気の原因とは、口で言えない「本当の想い」
このような経験から、精神疾患だけでなく身体症状においても、その心理的な背景に着目することは重要だと考えています。
心理トレーナーの梯谷幸司さんは「人は口で言えないことを身体で表現する。その身体で表現したものが病気です」と常々おっしゃっていますが、
この言葉を初めて聞いた時、「ああ、本当にそうだなあ」と深く納得したものです。
病気の原因に気づくこととは、病気を使って身体で表現していた「自分の本当の想い」を知ることでもあります。
そして患者さんが、自分の奥底に隠していた本当の想いを口で言ったり、諦めていたことを行動に移すことをサポートすることが、私の役割だと思うのです。
ここで、皮膚の症状に悩まれている患者さんの心理カウンセリングで使っている簡単なワークをご紹介します。
このワークも、口で言えなかった本当の想いに気づいていくために役立ちます。
病気の原因に気づくためのワーク
(1)ニキビなどの身体症状が出たとき、「ブツブツ」とか「ボコボコ」とか、感覚的な幼児語の名前をつけて紙に書き出し、
実際に「ブツブツブツブツ」「ボコボコボコボコ」と声に出してみる。
(2)その言葉で表現される状態が、実際の生活の中で起きていないか?をチェックする
解説)上記(1)の答えで「ブツブツ」と感じる人は、実際の生活の中で「親が小言をブツブツ・・・」「上司が文句をブツブツ・・・」などのように
何かしらブツブツしたストレスを感じていることがあります。
あるいは、同じニキビを「かゆーーーい」と表現する人は、「こんなにかゆーーーいのを誰かわかって!自分のこの苦しみを理解して!」という想いがあったり、
「みんなツルツルなのに、私はザラザラ」と表現する人は、他人と自分を比較して、「私はみんなと違う」「私はダメな存在だ」という自己否定があるかもしれません。
このような想いをさらに深く掘り下げていくと、口で言えなかった本当の想いに気づいていくことができます。
上記のワークで、口で言えないかった本当の想いに気づくことができたら、他者基準の思考パターンを自分基準に誘導していったり、
自己認識(セルフイメージ)やその体験への認識の仕方を変えていくアプローチを行っていきます。
病気の原因は、「自分原因」で考えると見えてくる
結局、病気の”本当の原因”に気づくためには「身体が語るストーリー」をしっかり見つめて「自分はどうして、わざわざ病気になったんだろう?」
「なんのために、病気を必要としていたのだろう?」と自分に問いかけていくしかありません。
私たちは「私はなりたくて病気になったんじゃない」「病気の原因はウィルスのせいだ」「遺伝のせいだ」というように、
病気に対して被害者的な立場で考えてしまいがちですが、その立場に立つ限り、本当の原因は見えてきづらいものです。
この両者の態度の違いは「自分原因」「他者原因」と区別することができますが、病気の原因に気づくためには病気に対して「自分原因」で考えることが欠かせません。
自分原因で考えてはじめて、病気の背景にあった隠された想いに気づくことができます。
なお、「自分原因で考える」ということは「自分が悪い」と自分を責めることではありません。
自分を責める思考は、病気の原因にたどり着くための気づきを逆に遠ざけてしまいますので注意してください。
「自分原因で考える」とは、「病気は自分で創ったものだ」という病気に対する主体的な立場です。
「病気は自分で創ったものだ」という立場を認めることで初めて、「自分で創った病気なのだから、自分で終わらせることも、
続けることも自分で決められる」という心理的な前提が創られていきます。
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