身体の右側に出る症状は「男性性」や「父親との関係」に関連し、身体の左側に出る症状は「女性性」や「母親との関係」に関連する、と言われることがあります。
しかし実際にわたし自身がカウンセリングを行う際は、「左右のどちらに症状が出ているか」ということだけで心理的な見立てをすることは、通常ありません。
それより重視するのは、患者さん自ら「これは右にあるのです」または「私は右側ばかりいろいろ症状が出るのです」などと側性を強調される場合です。
このとき、患者さんご自身が、男性性や父親、女性性や母親というテーマにおける葛藤に気づかれており、それを扱ってほしいというサインであることが少なくないからです。
ある卵巣腫瘍の患者さんとのやりとりを、事例としてご紹介したいと思います。(患者さんのプライバシーに配慮して、実際にあった例をもとにデフォルメをしています)
その患者さんは、問診票に、右側の卵巣が腫れている、右耳の耳鳴り、右足の湿疹・・と自ら「右側」を強調して書かれていました。
わざわざ書くからには、ご本人何らかの気づきがあるのだろうと思い、私はこう問いかけました。
私:「すべて右側なんですね」
患者さん:「ええ、そうなんです」
私:(独り言のように)「右側ばかり患うということは、男性性の問題、お父さんとの問題、与えることの問題・・など言うことが多いようですが」
患者さん:(顔色が変わる)
「小さい頃から、父が母を奴隷のように使っているのを見てきました。父に対する反発心がずっとあって、男に負けたくない、男に負けないように頑張らなければと思っていました。
就職してからも、女性というだけで下に見られ、私より能力の低い男性社員がどんどん昇進していくのが納得いきませんでした。だからますます、男に負けない。
女が男社会で認められるには、男の倍以上働かないといけないと思っていました」
(しばらくの間)
私:「しかし、『女は不利だから男の倍頑張らないといけない』というのは真実だと思われますか?」
患者さん:「いいえ、女性のお客様には、女性の私だからこそお願いしたと言われることもありますし、女性の視点だからこそ気づけること寄り添えることがあると思ってます」
私:「じゃあ、それはそう書き換えておいてください。それから、『女は損してる』という思いはありますか?」
患者さん:「う~ん、そういう時もありますが、男性より得をすることもありますね(笑)」
私:「じゃ、イーブンですね。それも書き換えておいてください」
私:「ついでに聞くとあなたはどうして卵巣腫瘍を選んだと思いますか?」
患者さん:「子どもが一人おりまして、もう一人欲しいのですが、また産休を取るとキャリアに響きますし、女は損だよな~とか思っていました」
私:「で、どうしますか?卵巣腫瘍のままでいきますか?」
患者さん:「いや、いいです。早く治して本当に子どもが欲しいです」
この患者さんは、現在、2人目のお子さんの産休から復帰されて、元気に働いていらっしゃいます。